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見ている

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一年前には犬が一匹と猫が三匹いた。
今は、おばあさん猫と不良の若手男子猫の二匹になってしまった。
可愛い二匹がなくなって落胆の日々が続いていた。
フト見ると遺された二匹の猫がこちらを見ている。
台所にいると隣の部屋から覗いている。
テレビを見ているとパソコンの椅子の下からこちらを覗いている。
どちらの猫も、なつかないのであまり可愛いがられない猫だ。
てきとうにゴハンをあげて、トイレをかたずけるだけなのだ。
その猫たちが、家を出る時は玄関に続く隣の部屋から硝子戸越しに見ている。
二階に上がる階段の途中から見ている。
なんか、きゅうに胸が痛くなった。
そんなことにも気付かなかった。
忙しく出て行く目の前で、声もかけられず、バチンとドアを閉められた猫たちの落胆は考えなかったのだ。
「自分だけが寂しいと思ってる」と妻に言われた。
哀しいのはお前たちも同じなのか。
帰ったら頭を撫でてあげよう。
「スズもモフもいい子、いい子」
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大和心になれなくて

桜酔い2

桜の季節は朧げで森に夢見る、そんな気分になるものです。

この森には、幾つの月が落ち眠っているのだろう。
真綿のような満月が落ちてきた朝
森のはずれで小さな薄桃色の花が咲きました。
青い鳥が振り返り、風は聞き耳を立てています。
きっと、この地上はあり得ない場所なのでしょう。

少し時が経ち農夫がその小さな花を見つけました。
慈しみ、抱き寄せ、頬寄せ、涙がこぼれました。
しばらくすると
空の奥の方で
幸せが音を立てて動き始めました。


真心とは産巣日(むすび)の神の神霊(みたま)によって備え持って生まれたままの心
とは、本居宣長の古事記伝の話です。
真心には智もあり愚もあり善事にもあり、生まれついて持っている心を真心と云うのだそうです。
良いことであれ悪いことであれ「コト」に触れて素直に動く心の状態を云うのだそうです。
それが夢であれです。
これが上代の心、大和心のようです。

壁を隔てた隣のステージでバンデウーラのカテリーナさんのコンサートがありました。
一青窈のハナミズキが聞こえてきます。
「薄紅色の可愛い君のね」「果てない夢がちゃんと」「終わりますように」
「君と好きな人が」「百年続きますように」
洩れ聞こえる声と音色に山並みが滲んで見えました。

そして農夫は娘の門出に何も言えませんでした。
真心だけが滲んでいます。