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ラピスラズリの空の色

ラピスラズリの空の色


この緑は何色って言うんだろう。土手に落ちていたクルミの実を拾ってきて、色の名前を色見本で探してみた。
玉子鼠(タマゴネズミ)藍玉子(アイタマゴ)柳葉色(ヤナギバイロ)女郎花(オミナエシ)なんとも、穏やかで風流な名前が続々と出てくる。昔の人は、よく付けたものだなぁ、と思っていたら
「もしかしたら、最初に言った人が、ただそう思って付けただけじゃないですかあ」とTさんが言った。
「あれ、この色、何かに似てるね、玉子の色でも、鼠の色でもない中間の色だから、タマゴネズミだよ」ってね。
「でも、玉子色にも鼠色にも見えないから、絵具で混ぜてみたんですかね〜」と私。
「でも最初、名前を付けたとき、絵具ってあったのかなぁ」とTさん。
「どちらにしても、自分で付けて構わないとしたら、このクルミの色は「夏胡桃色」ってことになりますね」
どうでもいい話が終わってTさんが帰った。
六月特有の湿った風が網戸越しに流れている。カウンターの中のパイプ椅子に浅く座り直し、銀泥のカサカサ鳴る青い空を眺めていた。
「この青も空色だけじゃないんだな」
辺見庸の「たんば色の覚え書」を思い出した。
「青は冷静や理性の象徴の色と思われているが、実際には狂気や幻想、恐怖を意味する色ではないか」と彼は言う。
ピカソの青時代の背景や宮沢賢治の「怒りの苦さ、また青さ」の言葉からも、青は憂鬱なブルーだけではない、もっと深い意味がありそうだ。

アフガニスタンの商人はベネチアまで五千キロの旅をした。不思議な荷物を運ぶためだ。
ラピスラズリ lapis(石) lazuri(群青の空)空の破片のような青。画材として使われた。
高価なラピスラズリは、砕いて宗教画に多く使われた。
その青は、金の値段より高くなった。神聖な青と呼ばれ、しかし狂気を孕んだ。
アフガニスタンの空はラピスラズリの青なのだ。
資源が少ないこの地方では、空を切り売りして生活しているのだ。

コーヒー液を落とすと、琥珀色の玉が液面を滑る。コーヒーオイルによるものだ。
琥珀玉と言われ、あまり綺麗なので、これを美味しさの指針としている店も多い。

美しいものには、危険を感じる。見凝めすぎると心を奪われる。

何か悲しいことがあるのか。悲しい時にはあんまり、小さな動物などを眺めると心の毒になるからおよし。
悲しい時に蟻やおたまじゃくしを見ていると、人間の心が蟻の心になったり、おたまじゃくしの心境になったりして、
ちっとも区別が判らなくなるからね。

尾崎 翠 アップルパイの午後「歩行」より

この空もアフガニスタンの空に繋がっている。
綺麗だからってあまり見凝めすぎないように。
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